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長春で新たに公開された関東憲兵隊の史料群 [満洲国]

長春市にある吉林省公文書館で、日本の1930・40年代の大陸侵略(従軍慰安婦や南京大虐殺を含む)をめぐる史料が多数発見されたことは、最近日本でも報道されているとおりです。これらの新しい史料群がつい先月、一冊の史料集としてまとめられ、長春の出版社から公刊されました(《铁证如山:吉林省新发掘日本侵华档案研究》〔『鉄証如山―吉林省で新たに発掘された日本の中国侵略文書の研究』吉林出版集団、2014年4月〕)。この史料集をこのほど入手しましたので、ここに紹介します。
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本書の解説によれば、今回発掘された史料はいずれも、旧満洲国の首都新京(現・長春)に日本の関東憲兵隊が遺した一次資料です。新京には関東軍司令部(中国共産党吉林省委員会の建物として現存)と関東憲兵隊司令部(吉林省人民政府の建物として現存)がありました。1945年8月、日本降伏と満洲国崩壊の際、関東軍はほとんど全ての公文書や秘密資料を焼却・破却したのですが、中華人民共和国成立後の1951年11月、旧憲兵隊司令部の敷地内の地下から多くの文書が発見されました。
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関東憲兵隊司令部(新京)

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現在の関東憲兵隊司令部旧址(現・吉林省人民政府)

当時、撫順戦犯管理所に拘禁されていた元新京憲兵隊曹長の弘田利光の供述により、これらが関東憲兵隊の滅却しそこなった文書群であることが明らかにされました。これらの文書群はその後、吉林省公安庁が接収・整理した後、1982年に吉林省公文書館に移され、近年になってようやく本格的な研究が開始されたのです。

関東憲兵隊司令部が長春に遺した文書群は約十万件に達しますが、うち従来整理・研究されたものはわずか2%に過ぎません。今年の初め、中国の国家社会科学基金の重要プロジェクトとして、「吉林省公文書館所蔵の日本軍の中国侵略文書の整理研究」が始動し、文書群の本格的な研究がはじまりました。その最初の成果として、このたび89件の史料が公表され、幅広く研究者が利用できるよう、史料集として公刊されたのです。

89件の史料は、すべて実物が鮮明なカラー写真で印刷されており、あらゆる研究者が客観的に検証できる形になっています。史料集に収録された文書の中には、満洲国や日本軍占領地における統治の実態を解明するうえで重要なものも含まれており、今回の史料の公刊がもっている意義を大いに評価したいと思います。

史料集は全729ページ、「南京大虐殺関係文書」「従軍慰安婦関係文書」「731部隊関係文書」「日本軍の強制労働関係文書」「日本軍暴行関係文書」「日本の中国東北(満洲)移民侵略関係文書」「東北抗日聯軍(満洲の抗日パルチザン)関係文書」「米・英軍捕虜に対する尋問・虐待関係文書」の八部から成ります。89件の全ての史料はカラー写真とともに、中国語による要旨と解説が付されています。

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本書121ページ(慰安婦関係史料)

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本書264ページ(強制労働関係史料)

先に述べたように、史料の公刊は中国の国家的研究プロジェクトの一環として実施されており、史料選択の「政治」性(とくに最近の緊張する日中関係をめぐる)も否定できないでしょう。また、出版を急いだためか、解説文の中には首を傾げざるを得ない箇所もあります。が、史料自体の価値は高く、あらゆる研究者が検証できる形で刊行されたことの意義は十分に評価すべきだと考えます。

そもそも、抗日戦争(日中戦争)の勝利は、中国共産党政権の歴史的正当性を構成する最も重要な根拠の一つであり、その関係史料は厳重に管理され、未公開のものも多数あります。満洲国関係の史料も同様で、吉林省公文書館所蔵の関東憲兵隊関係史料10万件のうち、今回公表された89件は氷山の一角にすぎません。満洲中央銀行の文書の整理はさらに遅れているようです。今回の史料集公刊を機に、関係史料の公開と研究がさらに広く進んでゆくことを願ってやみません。

なお、従軍慰安婦や強制労働に関する史料など、このたび公にされた史料について、本ブログ上で少しずつ紹介してゆく予定です。

長春だより

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